コラム

2026.02.01
太陽光発電の疑問

売電でも元が取れない?

 2022年の統計では2010年の頃と比べると設置費用の金額は半額になっています。太陽光パネルの使用年限を30年とした場合10年で投資金額を回収します、残りの20年はメンテナンス費用としてパワーコンデショナーの寿命が10~15年と言われていますので、パワコンの保証期間や交換時期と費用の目安も考慮しておかなければなりません。
 近年では東京都でも蓄電池を補助金で設置可能になっていますが、補助金が底をついたら終わりという早い者勝ちという中途半端な制度が適用されています。
 パネルの性能向上により、天気に左右されず発電は可能です。曇天は3~5割、薄曇りは7割程の発電量です。一方晴天でも外気温が上昇するほど発電量が落ちてしまいます。近年の猛暑日の太陽光パネルは20%近く低下しています。発電効率の低下は他の季節でも発生し、春秋で15%程度、冬で10%程度低下しており年間を通じて実質的な差は5~10%程度です。最近の気候変動で数値も動いていると思いますが!
 しかし非常用電源システムとしての動入を考えると有効です。しかし実際に地震や落雷で停電した電気が自動的に宅内に送られるわけではありません。一般的な太陽光発電システムでは、パワーコンデショナーに「自動運転機能」と呼ばれる機能がついていて、緊急用の電源が1つ設置できるようになっています。しかし、これは停電と同時に自動的に切り替わるのではなく自分でパワコンのスイッチを操作しなければならないタイプがあります。そして何よりも昼間しか使えないというのは困りますね。
 そこで災害対策の一つとして提案されているのが非常用電源設備「スマートエルラインライト」の導入です。いざという時にEVやハイブリット車などのACコンセントと本システムを付属ケーブルで繋ぐだけで、発電した電気を自宅で使うことができる優れものです。
 設置の際は是非とも提案したい内容です。

液状化対策-2-

構造物・地盤補強対策
 建物の基礎を強化したり、基礎直下の地盤の一部を補強して基礎地盤が液状化しても被害を軽減する方法を前回四つの方法をお話させていただきました。いずれも被害ゼロを目指すものではなく、あくまで軽減対策であり、被害を受けた時も改修を容易にする工法です。
 ベタ基礎は、地震の揺れが比較的小さく液状化が小規模な場合には被害を免れることはありますが、大規模な液状化が起きた場合、被害を抑止することはできません。最大の利点は液状化不同沈下して家屋が傾いても基礎が頑丈なため、ジャッキアップでの修復が容易なことである。そのためには、スラブ厚や配筋に十分留意が必要です。
 柱状改良工事は、軟弱地盤対策として多く利用されるようになりましたが、液状化対策として用いるには改良体の深さが液状化しない硬い地層に達している必要があります。
 杭基礎は、液状化しない地層に支持させれば、建物の沈下や傾斜を確実に抑止することができます。しかし、建物周囲の地盤が液状化によって大きく沈下すると、杭の抜け上がりといって杭頭が地表に突出した状態になってしまいます。
 こうなると杭に耐力上の問題が生ずるため、基礎と地盤の間の空間を充填する必要が出てきますが、これには百万円単位のコストがかかります。
 前述のように構造物対策で被害ゼロを目指すのは難しいですね、しかし、対策の有無が明暗を分けた事例も多数あります。国土交通省は統一基準で作成される液状化ハザードマップの全国整備を進めています。また、道路などの公共施設と宅地を一体的に街区単位で対策を行うための国の補助事業「宅地液状化防止事業」も2013年に創設されました。
 しかし、行政に依存した住まいの安全の確保には限界があります。市場のニーズがある限り、地盤リスクは不動産の価格に反映されない。つまり劣悪な地盤条件の土地でも、人気があれば地価は上がり高級住宅地化します。一人ひとりが宅地の安全性に対して高い関心を払うことが今後、悪条件の宅地の流通をへらしていくための最も有効な方法だと思います。
 液状化判定が可能な安価な地盤調査や対策工法の開発も鋭意進められてきていますが、費用面で500万円~1000万円、時にはそれ以上の出費となります。建築に関わる者としてコスト面での協力も必要ですね。

液状化対策-1-

地盤調査もしていない段階で、液状化が起こりやすいかどうかをを見抜くのは無理ですが、手っ取り早い方法としては、自治体などが公表している液状化ハザードマップを参照するのが一番ですが、液状化ハザードマップが公表されている自治体はすべての地域が網羅されているわけではありません。
液状化被害の事例がきわめて多かった土地条件「文献-1」を挙げてみます。
➀ 新しい埋立地
➁ 旧河道・旧沼地(昔、川や池沼があった場所)」
➂ 大きな川の沿岸(特に、氾濫常習地)
➃ 海岸砂丘の裾野・砂丘と砂丘の間の低地、谷埋め盛土の造成地
➄ 砂鉄や砂利を採掘した跡地の埋戻し地盤
➅ 谷埋め盛土の造成地
➆ 過去に液状化の履歴がある土地
 東日本大震災における液状化発生地点のうち、特に甚大な被害が発生した地域は、上記➀~➆のいずれか、または複数の条件に該当しています。東日本大震災で被災した千葉県浦安市は上記の➀と➆、熊本地震で被災した熊本市南区は➂、北海道胆振東部地震で被災した札幌市清田区は➅と➆に該当します。
 
 液状化に備える
 新築住宅の液状化対策工法は、➀液状化しにくい地盤に改良する方法(地盤改良)と、➁地盤改良せずに、基礎や基礎直下の地盤を補強する事により地盤が液状化しても建物の被害を低減する方法(構造物・地盤補強対策)、の二種類があります。対策の実施には、工法の長所・短所、地盤や敷地の条件、施工性、対策工事の近隣への影響、などを考慮して、地盤の専門家と相談して工法を選定する必要があります。
 
 地盤改良
 液状化被害をぼうし・軽減するための最も有効な方法は、建物直下の地盤改良です。宅地に適用可能な方法には、大別して以下の四種類の工法があります。
 1.地盤を締固め(密度増大):地盤中に砂、砕石、丸太を柱状に圧入し、地盤中に強固に締め固めた杭を造る。周囲の地盤は杭によって押し広げられるので圧縮して締固まる(密度の増大)
 2.地盤を固結(固化):セメント系固化剤などを用いた化学的安定処理に
 より、土粒子間の結合力を高めることで、液状化の発生を防止する。
 3.地下水位低下・排水促進:地盤を盛土で嵩上げして、地下水位までの深さをさらに深くする。
 :基礎の周囲に遮水壁を築造し、周囲からの地下水の流入を防いだ上で建物周囲に排水溝を設置するか井戸を掘り地下水位をポンプで汲み上げる。
 :建物直下に砕石など透水性がよいドレーン材を構築して、液状化時に発生する過剰間隙水圧を低減させる。
 4.地盤の変形防止
 :➀液状化しない層まで鋼矢板を建物外周に打設する方法と➁建物直下に格子状のソイルセメント地中梁を構築する方法がある。地中の壁で地盤を拘束することにより、地震の揺れで地盤がせん断変形(ひし形に変形)するのを抑制し、地盤が液状化するのを抑止する。住宅では➁が一般的
 いずれの工法も、地盤や敷地の条件によっては適用できない工法もあり、液状化対策を行うことによって別の弊害が出てしまうこともある。また、工事費自体が比較的安価でも維持管理費がかかる場合もある為、長期的展望に立って工法を選択する必要があります。
 住宅などの小規模建築物の液状化対策を行う場合は、一般的には震度5程度、地表での最大加速度が200㎝/ガル程度の揺れを想定して対策が行われるのが一般的です。それ以上の強さの地震に耐えるようにするためには、当然のことながらコストの増加となります。いずれの場合も、想定した地震の揺れによって液状化する地層の深さを適切に予測することが重要であり、せっかく地盤改良しても改良深度が不十分だと対策効果が得られないことがあります。
            参考文献1:国土交通省都市局調べ(2011年)

防音性能を向上させて工事費を抑える排水管

住宅のトイレや台所などの排水音を飛躍的にカットする防音材一体型パイプ(排水管)というのがあります。優れた防音性能と、防音材一体型なので加工や施工が簡単なのが特徴です。昔の木造の建物で2階に排水関係の部屋があり、1階が居室などの場合、夜のトイレの排水音が耳障りだったりしました。
今は防音材を巻いたりして防音するのが一般的になっています。しかし、2世帯住宅やアパートなどでは配管箇所によっては気になります。特に生活が開始しないとどの程度の音が不快か人によって様々です。最初から音を抑えるのは配管(塩ビ管)の外側に一般的には耐火グラスウールを巻き付け、更にその外側に遮音効果の高いオレフィンシートという材料を巻いた耐火建築向けの防音排水管があります。
 品質保持のために表面をシリコンフィルムで覆い、3層構造とすることで、これまでの排水管にないメリットを生み出すことができています。また、特筆すべきは、排水管と防音材が一体となっているため施工性が飛躍的に向上したことです。一般的に耐火建築物の排水用の塩ビ管は耐火二層管という材料が用いられています。これらには特に防音対策をされていないため音漏れを防止するためには、グラスウールに遮音シートや吸音材を巻いて施工しています。継手部分など複雑な箇所の施工精度によっては防音性能が損なわれることもあります。その点でこの材料は排水管と防音材が一体となっているため前述のような作業は必要としません。施工にかかる時間は圧倒的に少なくて済みます。コスト面でのメリットは排水管本体の価格は耐火二層管の方が安いのですが、そこに防音材を巻く作業を加えると耐火二層管の方が高くなってしまいます。施工性も現場搬入にとっても作業しやすい材料であるわけです。ちなみに耐火二層管とは内側に硬質塩化ビニル管を使用し、その外側を繊維モルタルで覆った二層構造の配管材です、また、耐火二層管は区画壁や床の防火区画を貫通する箇所に使用し、その他の部分は耐火VPを使用しますが硬いので施工精度が悪いのが難点と、継手の種類が少ないのがあるので注意が必要な材料です。このような材料がどの現場にも普及していってほしいものです。

2026.2.01
日本から和室がなくなる

和室の凄いところは畳の大きさは概ね三尺×六尺、あるいは三尺一寸五分×六尺三寸という具合に地域で決まっています。また「6畳」や「8畳」という時には畳の敷き詰め方は概ね決まりがあり、平面のプロポーションも決まっています。なので、畳の数で誰もが部屋の広さを想像できるし、4畳半と6畳と8畳と10畳の区分けができました。そしてこの平面図を見れば大工はどこに柱が必要か簡単に決められ、それが決まればもう棟梁の加工の仕事に移れるし、畳屋や建具屋、瓦屋などの他の専門職への数量を伴う発注も可能になります。畳二枚で一間四方、一坪になるのですが、木造軸組、畳、建具、瓦は、この一間四方にきちんと対応して納まる寸法体系でできています。だからこそ「6畳の隣が8畳で、その隣に6畳を・・・」というだけで、皆自分の仕事の量と割付が読めるので、施主側の描く簡単な平面図だけで高度な分業が可能になるわけです。設計者はいらないのです。この世界に誇れる「和室」の特質は、畳割と分業の優れたシステムとモデュロールの持つ凄さだけではありません、人々の振る舞いや五感と空間の分かち難い関係性
自然と人工物の絶妙な対象と融合、独自のさまざまな意匠等々枚挙に暇がありません。
それなのにですよ、現代日本の、少なくても住宅からは、「和室」が急速に消えつつあります。
 既存住宅(ストック)についてであれ、新築住宅(フロー)についてであれ、現代の日本の住宅においてどの程度和室が存在するかを正確に示すデータは存在しません。
 新築戸建住宅については、かつて規模の大きな調査がありました。旧住宅金融公庫が自らの融資案件数の1千~1万件を対象に全国で実施した無作為サンプリング調査があります。その結果は毎年「住宅主要データ」として公表されていました。そして、この調査には和室数に関する項目が含まれていました。しかし、残念ながら昭和末期から始まったこの調査は1996年(H8)年度で終了しています。いまとなっては30年ほど前のデータですが少し前の日本の住宅における和室はどうだったかを知るために紐解きますと、調査の始まった1987年(S62)年度は、和室のない新築戸建住宅はわずか1.2%
和室が2室ある住宅が最も多く35.4%、ついで3室ある住宅が23.1%であるから、この時
点で「和室は消えつつある」とは決して言えないのです。その後1996年(H8)年度までのデータを見てみると、年々和室数は減少しているものの、1996年度においても和室のないものは5.4%に過ぎず、2室以上の和室のある住宅が過半に達しています。また、某建設会社の着工した戸建て住宅について単世帯、2階建て全数(年間約6.000~9.000棟)の間取りだけを対象として行った調査の結果報告で、2018年度~2022年度の5年間の変化を分析したものだと、2018年度に59.4%だった和室の採用例は2022年度には34.6%にまで急減してしまっています。「和室」という囲われた室ではなく、居間の一部などに畳を並べた「畳コーナー」の方は増えていますが、11.4%が14.7%へと微増したに過ぎません。結果として、和室も畳コーナーもない戸建住宅の比率は5年間で28.0%から49.7%へと急増したのです。
 先の住宅支援機構によるフラット35融資案件を対象とした2017年度の調査では、「和室は無い」が50.8%であり、この調査では2018年度で和室の採用率は59.4%なので、断言はできないものの、フラット35融資対象住宅全体よりもこちらの調査が和室が少ないということはなく、むしろ多いかもしれません。この和室採用率が34.6%なので、悲観的になってしまいます。
 そうはいっても、手をこまねいているわけにもいかない、何せ「和室」は何にも代え難い特質がいくつもあり、しかも世界で日本にしかない空間なのです。和室を、あるいは和室の特質を引き継いだものを設計するに足る経験と知識を有する設計者がどれだけいるのか、その育成の問題もありますが、もっと深刻に捉えるべきは職人社会の持続可能性についてです。たとえば、直近の国税調査(2020年)の結果。畳職人の総数はわずか9.000人余。平均寿命は60.1歳。多くの職人が入植する年齢層であるはずの15~19歳の畳職人は全国でわずか10人であります。もちろん大工はもっと多いのですが1980年に90万人を超えていたその数は2020年には29万人余にまで減っており、平均年齢は54.2歳。15~19歳の大工は2.120人
であり、65~69歳が5万人弱であるのと比べると、その異常な少なさは声を失うほどです。左官とて同じような状況である。塗り壁が減少してしまったのも大きな要因です。 こうなってくると、近い将来和室あるいはそれに類するものの需要がそこにあったとしても、またそれを設計できる人材が間に合っていたとしても、それはいったい誰がつくるのかという大きな疑問符が浮かびます。これは、町中華のお店が継承者がいないので消えていく現状とラップしている様を見ると、大きなシステム改革が必要な時期に来てしまったのを感じます。

2025.9.01
エネ住宅のポイント

省エネ住宅とは➀住まいの熱を快適にコントロールする。・・・屋根・外壁・窓などの断熱性能に関する基準があります。➁住まいのエネルギーを賢く使う・・・暖冷房、換気、給湯、照明など住宅で使うエネルギー消費量に関する基準があります。
省エネ法の基準適合が義務付けられて、いよいよ新しい住み方を考えなくてはならなくなってしまいました。今まで吹抜けで高天井の開放的な家が目のかたきにされていますが、ちょっと待ってください。空間をあきらめるのではなくて新しい設備が出てきています。たとえば今回お話しするダクトレス熱交換型という換気システムがあります。従来型のダクト式の熱交換換気システムと違い、天井裏に張り巡らせるダクト管やクローゼットほどの広さが必要になってしまう室内機を設置するスペースが不要なため、より自由な設計が可能です。また、ロスナイ(全熱交換器)という換気システムも従来からありますが、熱交換率:93% 温度回収率:80% 消費電力も一般換気はACモーターの為、効率が悪く熱交換をしないので冷暖房費のコストがかかってしまいます。”約24W„一方、セントラル方式はダクトで空気を送るため高い動力が必要となりその分消費電力も拡大します。”約90W„空気抵抗が少ないダクトレス構造と最新のDCモーターを組み合わせた”せせらぎ„は1棟4セット(4台を有効な場所に設置すること)として6.4W 電気代は年間で500~1000円程度となります。省エネ住宅は熱交換換気システムを利用することで大きなポイントとなると思います。いくら断熱材で囲っても、熱交換しながら空気清浄・抗菌・脱臭効果のある高性能フィルターを装備したメンテナンスも容易にでき、ダクト式の換気システムより衛生的にも安心できる方式だと思います。ほかにも完全防水仕様、防風逆流防止屋外フードがあります。これは省エネ住宅の構築にとって大きな力になると思います。

2025.8.01
準防火地域内の準耐火建築物も建蔽率の緩和に!

以前から防火地域内の耐火建築物については、都市計画で定められた建蔽率に10%を加えた数値を建蔽率の上限値とすることができました。しかし、準防火地域に対しての緩和はありませんでした。
 令和元年に改正され、防火地域内だけでなく、準防火地域内の準耐火建築物においても建蔽率の制限を緩和する特例が設けられましたまた、耐火建築物と同等以上の延焼防止建築物と、準耐火建築物と同等以上の延焼防止性能を有する準延焼防止建築物も特例の対象となりました。これらは、周囲への延焼を防止するために、壁・柱・床その他の建築物の部分および防火設備に必要とされる性能に対して、基準法61条に基づく政令で定める技術的基準に適合する建築物で、同条に規定する構造方法を用いるものまたは同条の規定による認定を受けたものとなります。
※延焼防止建築物
 耐火建築物と同等以上の延焼防止性能をもつ建築物を延焼防止建築物という。
 木造建築物などの場合は、主要構造部の耐火性能の確保や防火設備・消火設備等を設けることで、防火・準防火地域への建築が可能。敷地境界線までの距離に応じて外壁の開口率が定まり用途や規模に応じた構造方法で延焼防止性能が規定される。一例をあげると戸建て住宅の場合は ■外壁・軒裏:75分準耐火構造 ■外壁開口部の防火設備:20分防火設備(両面) ■屋根・階段:準耐火構造 ■屋内:45分準耐火構造となる。(用途によって異なります)

2025.7.01
住宅にも宅配ボックスを!!

ネットショッピングの普及に伴い宅配便の量は近年増大している。古いデータだが2015年の宅配便の総量は1993年度の3倍以上で、再配達の量も激増2015年の荷物受け取り時不在率は23.5%にも達するという。最近ではコロナ過の影響もあり、ますます増大している。宅配業者の負担やエネルギー消費量(排出ガス)も激増の一途である。再配達の発生を減少させるには宅配ボックスの設置が有効であるが、マンションでの普及が進む一方、戸建住宅では認知度そのものが約20%と低い。1992年に宅配ボックスを開発したパナソニックエコリューション社はこうした現状を打開すべく、戸建住宅での宅配ボックスを検証した。
 実証実験の結果について、実証実験を行った市長は「大きな成果が得られました。再配達の増加は全国的な社会問題になっており、この結果がリーディングケースとして全国に知れ渡ることが大きな社会貢献であると考えています。再配達の抑制は将来に向けた持続的な課題であり、補助金制度の導入も検討事項としてあります」と述べた。参加者は「共稼ぎなので、日中に荷物を受け取ることが難しく、配達時間を指定すると自由に外出できず、ストレスを感じていました。宅配ボックスがあればネットショッピングが気楽に楽しめます。市内にはコンビニなどが少なく、日用品を買うにも車での移動を強いられますが、その負担も大幅に減少しました」というポジティブな回答を得られた。
 一方、いくつかの課題も散見された。宅配ボックスが稼働しなかった回数は57回を数えるが、その主な理由は「宅配業者が宅配ボックスに荷物を入れてくれなかった」「宅配ボックス内がいっぱいだった」「冷蔵・冷凍が必要な荷物だった」「荷物のサイズが大きすぎて入らなかった」である。同社は「宅配業者への周知徹底はもちろん、製品自体の改善も検討しなければなりません。冷蔵・冷凍への対応ではパナソニックの冷凍・冷蔵技術を応用できると思います。価格の高さも各方面から指摘されていますが。再配達の問題はメディアでも取り上げられる機会が多く、生産が追い付かないほどの引き合いがあります。量産効率が見込めるため、低価格化は実現できると考えています」と述べた。コロナ問題での需要もあって早急な対応があっての現状だが、まだ戸建住宅への普及率は今一つだが、消費者の認識で郵便ポストと同様の設備であるという認識が一般化されてほしいものです。

2025.6.01
窓に求める性能の重要さを考える

省エネルギー住宅を考えるとき、断熱性能の向上は欠かせません。これらは近年、材料・工法の開発や、施工方法の改良などで格段の進歩を遂げてきました。しかしまだ改善の余地はあります。「温熱環境性能の高い家では、屋内のどこにいても温度が変わりません。頭では分かっていても、その快適さを多くの人はまだ体験していないという事です。」部屋ごとの温度差が大きく、高齢者などがヒートショックを起こす危険性のある家はまだ多いのです。また、断熱・気密が不十分な住宅では、せっかく吹き抜けなどを設けても暖かい空気が上部に留まってしまうので、大きな空間が敬遠されてしまう事実も出てきます。残念ですよね
 「家全体の断熱性能を高めると、これらの問題が解消します。熱の出入りがなければ、建物内部の温度は一定になるからです。温熱環境を整えられれば、本当の意味で自由な空間が生まれます。これは寒冷地だけの問題ではありません。」
 日本ではこれまで、窓に求められる性能が低すぎました。薄いアルミ材とガラス1枚が昨今では断熱性能の向上とスリムな(薄いではなく)フレームによる次世代スタンダードと期待される樹脂とアルミのハイブリッド構造である窓が(株)LIXILから「サーモスⅡ-H」とアルミ構造の「サーモスL」が販売されています。他社も高性能サッシは出てきています。性能とデザイン、コストを総合的に考えると「サーモス」は断熱性能だけでなく、気密性も高い点ではコストパフォーマンスが高いサッシと言えます。
 昨今ではガラス部分でも、Low-Eガラス・遮熱複層ガラス・複層ガラス・トリプルガラス・真空ガラス等々選択の幅も多岐にわたる構成になっています。予算と性能を検討していく上でも選択肢が多いのはありがたいですね。
 東京をはじめとするⅥ地域などの比較的温暖な地域でもこの様なサッシを導入することで温熱環境が向上し、消費エネルギーが極端に抑えられるかの可能性が示唆されます。

2025.5.01
過激な改良工事を防ぐ地盤セカンドオピニオン

基礎の仕様について定めた平成12年建設省告示1347号では、地耐力が20KN/㎡以上30KN/㎡未満の土地について、基礎杭による地盤改良工事を行うか、ベタ基礎とするかのどちらかを選べば良いと規定されています。
 しかし安全を考慮して改良工事の判定が出ることが多く、特に東日本大震災後はその傾向が強くなっているといいます。このような状況下でこそ、地盤の状態を正確に見極め、本当に必要な対策を判断する必要があります。
 そこで注目していただきたいのが地盤調査会社の調査結果を再解析し、第三者の視点から現実的な基礎仕様の提案を行う、地盤ネットの「地盤セカンドオピニオンⓇ」です。
 同社には、20万件以上という膨大なデータ解析から構築した独自の解析技術があり、不同沈下など地盤事故が発生するパターンを熟知しています。地盤改良工事が必要と判断された調査結果を再解析し、地盤補強が本当に必要かどうかを判定することで、過剰な改良工事の削減に貢献しています。
 同社がこれまで依頼を受けた物件のうち、約7割で地盤改良工事は不要という判定結果が出ています。地盤改良工事には50~300万円程度の費用がかかり建築主にとっては大きな負担となります。正確な判断によって、本来は不要である改良工事は避けるべきですね。
 なお、今回の地震による被災地には同社が判定した物件が約900件あったのですが不同沈下による保証事故は発生していない。地盤セカンドオピニオンの判定が妥当であったなによりの証明であると言えるでしょう。
 適切な判断を行うためには、調査の段階で精度の高いデータを入手することが望ましいですが、戸建住宅の地盤調査では、一般的にSWS試験が用いられますが、同社では現在主流の機械式ではなく手動式のSWS試験を推奨しています。「機械式のSWS試験は実際よりも地盤が弱いという判定結果が出るケースがあるため、より正確で精度の高いデータを入手したい場合には、手動式SWS試験が適しているのです。」と同社の社長は話す。
 また、液状化の可能性を判断するには、土質の確認が必要になる。しかし、SWS試験で判定される土質は音や感触からの推定にすぎません。そこで同社では、手動式のSWS試験に加えて、手回しで土を採取するハンドオーガーボウリングの採用を提案している。敷地の四隅で手動式のSWS試験を行うことで不同沈下の判定を行い、さらに一箇所でハンドオーガーボウリング調査を実施することで土質の判定が確実になり、精度の高い地盤判定が出来るようになるのです。調査費用も両方合わせて一般的には安価でできます。損害保険も利用できるので心配なく利用できるのではないでしょうか。

2025.4.01
大改正 建築物省エネ法開始

いよいよ2025年4月以降に工事着手する住宅を含むすべての建築物について、省エネ基準適合が義務付けられます。但し、居室を有しない(生活空間)又は高い開放性を有する(車庫・倉庫等)ことで空気調和設備を設ける必要のないものは適用除外となります。
 省エネルギー基準とは、住宅の場合は外皮性能基準と一次エネルギー消費量基準、非住宅の場合は一次エネルギー消費量基準にそれぞれ適合する必要があります。
 ●外皮性能基準とは、外皮(外壁・窓等)の表面積当たりの熱の損失量(外皮平均熱貫流率)が基準値以下となること。
 ●一次エネルギー消費量基準とは、設備機器等における一次エネルギー消費量(太陽光発電設備等による創エネ量(自家利用分)は控除)が基準値以下となること。
 ※【一次エネルギー消費量の算定対象となる設備機器等】
 空気調和設備(暖冷房設備) 換気設備 照明器具(LED照明)給湯設備 昇降機(非住宅のみ)
 その他の住宅の場合は、太陽光発電・ペアガラス二重サッシ・高効率給湯(エコキュート等)・断熱材・日差しを遮る庇
非住宅の場合は太陽光発電・断熱窓サッシ、ガラス・高効率空調設備・LED照明等
住宅の外皮性能はUA値(ユー・エー値)とηAC値(イータ・エーシー値)により構成されいずれも、地域区分別に規定されている基準値以下となることが必要です。いずれにしても、省エネ基準適合義務制度に係る手続きの多様化に伴う作業量、工事に係る建築材料及び設備機器の工事費は最終的には施主側の工事費というところに負担される事となります。決めるのは政府で負担は国民という、いつものパターンです。
木造住宅 標準計算の例
 基本情報(地域区分・床面積・構成・建物種別・計算に用いたプログラムの種別)
外皮・暖房設備・冷房設備・換気設備・給湯設備・照明設備・太陽光発電設備・太陽熱利用設備・コージェネレーション設備(発電と同時に発生した廃熱を冷暖房や給湯などの熱需要に利用して、エネルギー供給システムの総合熱量を向上させるシステム)このような作業及び計算をして一次エネルギー消費量計算を行う場合、外皮性能や設備機器に係る性能の他、様々な情報を図面などに記載することが必要となります。この様な内容を確認するために、適合義務・適合判定を定められた機関に建築物エネルギー消費性能確保計画を提出することになります。このため、こうじひ・設計費用がどうしても価格に反映されるため、駆け込み申請が昨年暮れから多くなっています。やれやれですね。

2025.3.01
世界を変えた建築

世界を変えた建築とはコルビジェという建築家が1950年代に設計したフランスのロンシャンにある礼拝堂は大々的にコンクリートの打ち放しを用いた建築で有名な作品の一つです。
 スペインの建築家ガウディが設計したバルセロナのサグラダファミリアも2023年日本でもガウディ展が開催されましたが、大盛況に終わりました。様々な困難を乗り越え完成のめどが世紀をまたいで築造されているのです。
 1960年代はウッツオンがコンペティションでオーストラリアのシドニーに設計したオペラハウスはヨットの帆を連想させる美しい形態の建物ですがこれはコンピューターが一般化して建築が可能になったと言われています。
 1990年代以降はフランクゲーリーという建築家もこれはコンピューターを使った設計の建物でスペインのグッケンハイム美術館も大胆な形態を引き出しています。最近では2014年にフランスのパリにフォンダシオン・ルイ・ヴィトン美術館が話題になっているようです。
 1990年代からのコンピューターを使用したCADというシステムで今後の建築の世界建築も変化していきます。しかし我々の住む地球自体が大きな変動の波にどう変わって行くのか、あるいは変えていけるのかが今後の建築の世界にも必要になっているのです。人間が地球に優しく寄り添わなければならないのです。

2025.2.01
住宅等の機械室などの容積不算入に係る認定制度の創設

令和5年4月1日施行される改正法では集合住宅の省エネ化を推進する上で手続の円滑化が求められていること、また、近年当該特例許可において共同住宅などにおける高効率給湯設備に関する許可の実績が一定程度蓄積してきたことから、改正法では、住宅等の機械室等で一定の条件を満たすものについては、建築審査会の同意を不要とする特定行政庁の認定制度が創設されました(法第52条改正)。認定の基準については、以下とされています。(施行規則第10条の4の5(新設))。
 一 その敷地が幅員八メートル以上の道路に接する建築物に設けられるものであること
 二 その敷地面積が千平方メートル以上の建築物に設けられるものであること
 三 当該建築物部分の床面積の合計を住戸数で除して得た面積が二平方メートル以下であること。
 四 当該建築物部分の床面積の合計が建築物の延べ面積の1/50以下であること。
なお、認定の対象となる機械室に設けられる給湯設備等の建築設備は、電気ヒートポンプ給湯機、潜熱回収型給湯機、ハイブリッ ト給湯機、給湯の機能を有する燃料電池設備、給湯の機能を有するコージェネレーション設備である。

2025.1.01
日本の空き家率が世界一の理由

空き家が放置されることのデメリットは大きく、また、多岐にわたります。住宅は経年劣化し空き家となってしまうと加速度的に劣化のスピードは進んでしまいます。換気や採光がされないままの状態が長く続くと、湿気で老朽化が進み周囲の環境も劣化させてしまいます。このままでは、今後空き家がさらに増え続けるのは間違いなく各地で地域のつながりが崩壊し、ゴーストタウン化していく事も避けられないでしょう。これは日本での特殊な現象だということです。
 国別統計専門サイト「グローバルノート」によると2020年のランキングによれば、13.55%で、国土交通省のデーターでは13.6%で空き家の種類別内訳は「賃貸用又は売却用の住宅:59%」などを除いた「その他の住宅:41%」がここ20年で約1.9倍に増加となっています。なお、「その他の住宅」のうち一戸建て(木造)がもっとも多いです。
 日本は2008年から人口減少社会となり、2023年からは世帯数減を迎えると予測されています。住宅市場でいうと空き家が今後右肩上がりに増加していくと指摘されています。また、2025年問題と言われるようにその頃には団塊世代が75歳以上の後期高齢者となり、2035年にはその世代が所有していた住宅が中古市場に出回ってくると言われています。
 例えば、空き家に関して言うと、2018年の総務省住宅・土地統計調査によると849万戸、住宅ストックの13.6%が空き家であることは周知のとおりです。売却用・賃貸用・別荘などを除いた利活用のめどが立たないままの「その他の空き家」は349万戸となっています。2018年の住宅・土地統計調査を基にした野沢千絵氏の「空き家予備軍」の調査によると将来はもっと深刻な状況になると示唆しています。現時点で65歳以上の高齢者のみの住む住宅を「空き家予備軍」と定義し、その数を算出しています。その結果によると全国の戸建の空き家予備軍の数は、約829万戸にのぼって、前回の2013年調査に比べて5年間で109万戸、年平均で21.8万戸増加しています。戸建て住宅の総戸数に占める空き家予備軍の割合は、なんと、全国平均で28.8%
4軒に1軒を超える割合になります。
 参考までに首都圏のランキングを見ると2万戸以上の戸建て住宅を有する市町村が対象として関東地方でも、都心から20㎞圏内あるいは30㎞圏内の自治体でも25%を超える値を示していることがわかります。すなわち。空き家は地方圏だけの問題ではなく、私たちのみのまわりのあちこちに点在する事柄となるのです。一方、都市部の分譲マンションの空き家状況に目を向けてみると、2018年のマンション総合調査では、マンション総戸数に占める空き家戸数の割合は、完成年次別でみると古いものほど多くなっています。例えば54年以前のものでは空き家率が総戸数の20%以内になっているマンションが48%を占めています。また、マンションの総戸数に対する所在不明・連絡不通の割合も築年数が古いものほど多くなっています。例えば、所在不明・連絡不通の住戸の割合が20%超のマンションが全体の22%、20%以下のものを含めると合わせて39%となっています。今後、高級マンションではこのような状況の空き家の占める割合が増加してくることを想定すると、戸建て住宅と同様に、マンション管理組合、区分所有者が空き家問題を先送りしないようにするための管理の適正化が問われていると言えます。現状のままだと先行き不安ですね。
 空き家を所有する人たちの空き家の活用意向については、様々な市町村がアンケート調査を行っていますが、その結果を見ると「売却したい」よりも、「現状のまま」「特に決めていない」「わからない」と回答する割合が上回っている市町村が多く、どのような利活用をすべきかさえ、検討されていない現状にあります。前述の野沢氏は、こうした「相続後にとりあえず置いておく空き家」のことを『問題先送り空き家』と称しています。問題先送り空き家は、空き家の所有者である当事者やその近隣住民・自治体が解決の糸口を見い出せないまま、更に時間が経過することが多く、空き家の荒廃化と共に所有者の代替わりなどで事態を悪化させるという空き家問題の根本的最大原因の一つとなっているのです。
 これから、団塊の世代の後期高齢者への移行という人口の高齢化に対する形で生活支援の関連した専門職能、医療福祉・介護といった福祉との関連職能も今以上に期待されてくるでしょうが、人口減少の日本では人手不足になってしまっています。国で外国人看護師研修を見直して、日本以外の国々から手を借りていかないと、この国の未来はあるのでしょうか、空き家対策と合わせて居住者に提供する事の対策を国はもっと検討しないと・・・まずは東京から。
お問い合わせ~施工監理まで行います。

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